[車いすテニス男子シングルス決勝]
○国枝慎吾 4-6,6-1,7-6(3) ●ステファン・ウデ(フランス)
■「自分を信じることができた。勝利への執念が実を結んだ」。最終セット2-5のピンチから生還、第8ゲームと第10ゲームで計3度、相手のマッチポイントをしのいだ国枝が胸を張った。対戦相手のウデとはこれまで52回対戦し、39勝12敗の成績が残る。宿命のライバルは持ち前の攻撃力と、球ぎわの執念で国枝を追い込んだ。国枝を支えたのは、屈強なメンタルだった。
■観客席の陣営にはメンタル・トレーニングコーチのアン・クインがいた。国枝に彼の代名詞ともなった「俺は最強だ」のフレーズを授けた人物である。右ひじの故障に苦しみ、2年以上、四大大会タイトルから遠ざかっていた国枝は、今回、久しぶりに恩師に帯同を依頼した。国枝は「彼女がいてくれたことが大きかった。試合中にも『俺は最強だ』と思えた」と感謝した。
■英語の優勝スピーチでは「本当の意味でケガからカムバックできた」と話した。右ひじの故障で半年以上実戦を離れ、昨年4月に復帰したが、当初は痛みも残ったため、試合に出ながらバックハンドのフォーム改造に取り組んだ。「打ち方を変えることで本当に痛みがなくなるのか。疑問を感じながらやっているのはつらかった」と国枝が打ち明けた。自分を信じること、勝って不安を振り払うしかなかった。全豪の優勝は9度目。四大大会の王者がめまぐるしく代わる混迷の男子車いすテニスに、最強の男が帰ってきた。
(広報委員会)