[男子シングルス決勝]
○野口莉央(明治安田生命) 6-3,6-4 ●清水悠太(三菱電機)
■コートに現れた清水の左ふくらはぎには厳重にテープが巻かれていた。シングルスと男子ダブルス、混合ダブルスの3種目ですべて決勝に進出、前日のシングルス準決勝では尻上がりに動きが軽くなったが、疲労がたまっていることは想像に難くない。試合がスタートすると、対戦相手の野口が「もっと動きのいい選手。あまり動けていない」と感じるほど、清水の動きは切れを欠いた。しかし、対戦相手のコンディションが野口の勝利の価値を下げるものではない。
■野口も連戦の影響で持病の腰痛が出て、サーブはスピードが上がらなかった。両者、100%に届かないコンディションだったが、野口は本来のプレースタイルを見せ、高いパフォーマンスを披露した。特にフォアハンドの逆クロスが素晴らしかった。一瞬、ためをつくって打つから、読みのいい清水が一歩も動けない。ダウン・ザ・ラインへの展開、さらにドロップショットも的確で、相手を守勢に追いやった。
■好ショットを支えたのが動きの速さだ。清水もコースと弾道の高さを変えて揺さぶってきたが、ことごとく追いつき、体勢を整えて返球した。「悠太は全種目、決勝に残っていて、動きで負けたら恥ずかしいと思い、常に足を動かすというのを意識した」。準決勝までの4戦と同様、最後まで走り抜いた野口が胸を張った。
■「攻めるときは攻め、守るときは守ることができた」と野口。3年間のプロ活動でそのテニスを培った。1年目からヨーロッパのクレーコートを回り、世界のテニスを体感、プレーの幅を広げた。プロ1年目の2017年はほとんど勝てず、最終ランキングは1065位と4桁だった。それでも、「コツコツやるタイプ」という野口は毎年、欧州の下部ツアーに挑み、派手さはないが攻守のバランスのとれたテニスを身につけた。
■最新のATPランキングは自己最高となる398位。出場選手では367位の清水、374位の今井慎太郎(イカイ)に次ぐ3番手につける。第6シードは地位としては伏兵だが、栄冠は番狂わせとは言えない。正しい準備をし、やるべきテニスを実践した20歳は、最も優勝にふさわしい選手の一人だった。
■左ふくらはぎに痛みをかかえて決勝に臨んだ清水
「準決勝が終わって痛みが出た。できるところまでやろうと思って入った。本当はもうちょっと動けたかもしれないが、けがをかかえて試合をすることがなかったので、怖くて動けなかった。(第2セット、ブレークで先行した場面は)この状況でもコートに1秒でも長くいようと思った。野口選手はミスが少なく、長いラリーをせざるを得なかったので、しんどかった。彼もまじめで、やるべきことをやっているので、(優勝は)当然の結果。彼が勝ったことには驚かない。近い年齢の選手なので、一緒に上の選手に食らいついていければ」
(広報委員会)
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