日本中体連加盟問題に対する日本テニス協会の対応について
2016年9月
(2020年1月更新)
公益財団法人 日本テニス協会
錦織圭選手を始めとする多くの日本選手の国際舞台での活躍により、テニスに対する社会的関心が高まっています。そして多くの中学生やこれから中学校に入学する小学生やその保護者から、「なぜ多くの中学校では硬式テニス部がないの」という質問や疑問が日本テニス協会に寄せられています。こうした質問や疑問に少しでもお答えするため、日本テニス協会は本資料「中体連加盟問題に対する日本テニス協会の対応について」を用意し、公式ホームページに掲載することといたしました。
1. はじめに
硬式テニス(以下、「テニス」という。)はソフトテニスを上回る人気スポーツです。そのことは、中学生が過去1年間に行った運動・スポーツ種目でソフトテニスはテニスを上回っていますが、今後続けたい、始めたい運動・スポーツ種目ではテニスがソフトテニスを上回っているとした民間調査機関の報告(註1)で明らかにされています。
日本テニス協会が2014年行った調査(註2)によると、全国の高等学校におけるテニス創部率が65.7%であるのに対し、全国の中学校では10.1%に留まっています。そして中学校の場合、私立中学校のテニス創部率が52.5%に対して公立中学校でのテニス創部率が6.7%に過ぎません。公益財団法人日本テニス協会は、中学校、とりわけ公立中学校でテニスが普及していないのは、同競技が公益財団法人日本中学校体育連盟(以下、「日本中体連」という。)主催の全国中学校体育大会の公式種目として採用されず、ソフトテニスだけが採用されていることに大きな原因があると考えています。このことを日本テニス協会では「中体連加盟問題」として1990年代後半より取り組んで参りました。
未加盟競技の日本中体連加盟には、全国9地域(ブロック) 中体連のうち2/3以上、つまり6地域以上が地域中体連への加盟を必要とする加盟基準を満たす必要があるとされています。長年の県レベル、地域レベルでの加盟に向けた努力により、テニス競技の地域中体連への加盟及び準加盟は確実な進展を見せ、2017年の時点において、北海道、近畿、四国、九州の4地域が加盟・準加盟を達成しました。しかし、加盟基準を満たすことはできず、テニス競技の日本中体連加盟実現には至りませんでした。
2. 問題の背景
日本テニス協会は、こうした現状そして長年に亘る中体連加盟運動にも拘らず、テニスの日本中体連加盟が実現しない背景として、次の認識をしています。
① 全国9地域のうち6地域以上で地域中体連加盟という日本中体連加盟基準が、テニスを含む未加盟競技の日本中体連加盟を厳しくしている。事実、全国中学校体育大会には20の公式競技種目がありますが、過去35年間、この基準の下で新たに公式種目として参加を認められた競技は存在していません。
② 県レベルや地域レベルでの中体連加盟要件や加盟基準が厳しく、その結果、日本中体連への新規加盟を困難にしている。
③ また、日本中体連は全国の中学校生徒の健全な心身の育成と、体力の増進及び体育・スポーツ活動の振興を図り、もって中学教育の充実と発展に寄与することを目的としている公益法人であり、日本中体連は下部組織としての全国9地域中体連や47都道府県中体連を擁している全国組織です。しかしながら、人気スポーツでありオリンピック公式競技でもあるテニスで、中学生が長年県レベルで直面してきた困難な状況の是正に積極的な姿勢を見せるに至っていません。
3. 日本テニス協会としての対応
日本テニス協会は、日本中体連による状況改善に向けた積極的な行動が認められないことから、2014年11月25日、政府に「日本中体連主催の全国中学校体育大会の公式種目として硬式テニスを採用する件」と題した請願書を提出し、全国中学校テニス連盟加盟の中学校を全国中学校体育大会に参加させるよう日本中体連に勧告するよう求めました。これは、テニスが同大会の公式競技種目として認められれば、選手に帯同する教員の校外活動が公欠扱いとなり、また特に公立中学校におけるテニス部創部の困難さも取り除かれ、中学校でのテニスを行う環境も大きく改善されると期待しての行動でした。
中学校でテニスをする環境の改善活動の一環として、学校教育を所管している文部科学省、さらには学校体育やスポーツを所管しているスポーツ庁とも中学生におけるテニス環境の改善に向けた意見交換を行ってきております。他方、テニスの振興に関心を持つ超党派の国会議員は2016年4月に勉強会を立上げ、オリンピック・パラリンピック競技でもあるテニスの日本中体連加盟問題の打開に向けた活動を開始し、日本テニス協会もそうした活動に対して積極的に情報提供を行っているところです。
しかし、こうした多くの関係者の努力にも拘わらず、依然として、事態の改善に向けた成果はもたらされておりません。
4. 現状
日本テニス協会は、以上の活動と同時並行的に、全国中学校テニス連盟と連携して日本中体連加盟基準である6/9地域の加盟のための努力を継続してきました。その結果、中国地域では広島県の県中体連加盟が2017年度に実現したことにより地域中体連への準加盟が2018年度に実現しました。他方東海は、4県中三重が県中体連に加盟し、愛知、岐阜、静岡が県中体連準加盟を実現していますが、東海の地域中体連加盟基準が4県全ての「加盟」を要件としていることから、東海の地域中体連加盟の目途は立っていません。関東は東京、埼玉、千葉、山梨、茨城の加盟及び準加盟に続き、栃木県・群馬県の加盟が実現し、関東中体連加盟基準である6県の加盟・準加盟を実現しました。これを受けて、神奈川県でも加盟が実現するとともに、2019年2月に関東ブロックの準加盟が実現しました。
こうして、日本中体連加盟基準とされた9ブロックのうち6地域以上の加盟・準加盟を達成することができました。これを受けて、2020年度の日本中体連準加盟承認され、2021年度から全国中学校体育大会でテニスが公式種目として実施される見通しとなり、そのため日本中体連の大会実施基準に則った大会運営の準備をしてきました。
しかし、2019年12月に突然、日本中体連より、「地域大会が地域中体連で主催されていることと、地域で中体連競技専門部が組織されていること」との2基準を北海道と関東が満たされていないことから、日本中体連加盟は認められない、との通告を日本テニス協会と全国中学校テニス連盟は受けました。
この通告にある2基準については、これまでの日本中体連との一連の会合において言及はされておらず、中には2基準と異なる助言が日本中体連より本協会及び全国中学校テニス連盟に対してなされていた事例もあります。特に、2019年7月の日本中体連訪問時においては、日本中体連による「全国の各ブロックの状況は把握している」との発言とともに、双方は2021年度準加盟と大会開催を前提に日本中体連大会開催基準に則った大会開催の準備関する協議を行っています。
本協会は、日本中体連との一連の会合結果を踏まえ、本協会評議員会等を通じて日本中体連への2021年度準加盟の見通しを対外的に発信してきてきました。また対内的にも2018年度事業報告にも掲載し、この事業報告は内閣府へもなされています。さらに、加盟後の「大会開催基準」を満たす形での運営を見据え、2020年度全国中学校テニス選手権大会から開催フォーマットの変更を予定しています。今回準加盟にあたらないとの指摘を受けた2地域においても、大会開催に必要な組織の設置とともに、ブロック大会を開催している実績があります。
以上により、日本テニス協会は、日本中体連による会合での通知内容がこれまでの一連の会合における指導や助言を根幹から覆すものとして通告の撤回を求める申し入れを2019年12月26日に日本中体連に行う一方、2021年度の日本中体連加盟実現に向けた活動を全国中学校テニス連盟と共に継続しています。
(註1) 「青少年のスポーツライフ・データ2015 - 10代のスポーツライフに関する調査報告書」、公益財団法人笹川スポーツ財団、2015
(註2) 「平成26年度テニス環境等実態調査報告書」、公益財団法人日本テニス協会、2015