はじめに
2015年11月
公益財団法人 日本テニス協会
地球温暖化や大気汚染、海洋汚染、オゾン層の破壊、酸性雨、広範な砂漠化、有害廃棄物の越境移動、気候変動による生物多様性の減少や種の絶滅、乱伐、水不足に至るまで環境問題は地球規模の問題となっています。環境問題はグローバルですが、その解決にはローカルな取り組みが欠かせません。私たち一人一人が自然環境の価値や環境と人間との関わり方についての認識を深めるとともに、環境問題の原因となっている社会経済等の現状を理解し、環境に配慮した仕組みに社会を変革していく努力を行うことが求められています。スポーツそしてテニスに関わる私たちも無関心ではいられません。
国際スポーツ界、日本スポーツ界の取り組み
国連や国連環境計画(UNEP)などの国際機関による環境保護への対策に呼応して、国際オリンピック委員会(IOC)は1990年代初頭に「スポーツ」、「文化」に続いて「環境」をオリンピズムの3本柱として、地球環境への配慮のもとでオリンピック競技大会を行うことを公表しました。その後、IOC専門委員会として「スポーツと環境委員会」が設置され、定期的に世界会議を開催しています。実践的な活動として、オリンピック開催地の環境への取り組みのシェア、オリンピック選手やチームを通じて環境保全のメッセージを伝えたり、また、会場にポスターや横断幕を掲示するなど、環境のための啓発活動を積極的に進めています。自然の保全、環境保全に向けた取り組みはもはや日本のスポーツ界も例外ではなくなり、日本オリンピック委員会(JOC)もスポーツ環境専門部会を設置し、スポーツ競技団体もその社会的責任(CSR)として環境問題に対して最大限の取り組みが求められるようになりました。 同様な取り組みが、スポーツ用品メーカー等のスポーツ関連業界にも広がっています。
テニスと環境保全
テニス界は、生涯スポーツ、競技スポーツそして観るスポーツという3つの異なった形態で環境問題との関わりを持っています。生涯スポーツあるいはレクリエーショナルスポーツとしてのテニスをするテニス愛好者、競技スポーツとしてのテニスの競技会に出場する選手あるいは大会運営に携わる大会主催者、そして競技会を観戦する観客として、更にはテニスの強化や普及に従事しているテニス協会関係者や指導者として、そしてテニスクラブやテニススクールを運営するテニス事業者が関わる問題であり、それぞれが異なった立場や違った形で環境保全に取り組むことが求められています。つまり、テニス愛好者や競技者はその消費行動において、観客は観戦マナーにおいて、大会主催者はイベント会場において、テニス事業者は施設管理において、そして協会関係者や指導者は環境に優しい協会運営活動や教育・啓発活動においての対応です。
日本テニス協会としてのこれまでの取り組み
日本テニス協会(JTA)は日本のテニス界を統轄する中央競技団体ですので、その環境保全への取り組みは日本テニス界全体を対象としたものでなければなりません。JTAもJOCスポーツ環境部会に委員を派遣し、JOCと連携して環境保全に取り組んでいます。
JTAの環境保全の取り組みは、教育・啓発活動並びに個別的な環境保全活動を中心に展開されてきました。教育・啓発活動においては、JTA主催大会、国内開催の国際大会、公認指導者を対象としたJTAカンファレンス、毎年9月23日に全国で展開されている「テニスの日」に代表されるテニス普及イベント等でのJOC環境ポスターや環境バナーの掲示、スポーツと環境のシンボル旗「エコフラッグ」の掲揚が代表的なものでした。特に、日本テニス界が連携して毎年開催しているテニスの日では、「ほんのちょっとのエコ活動」をスローガンに啓発活動が実施される共に、子どものマナーアップに繋がる継続的なキャンペーンとして「ごみゼロ運動」が行われてきています。こうした環境保全活動にJTAも参加してきました。個別的な環境保全活動としては、グローバル・スポーツ・アライアンス(GSA)の事業に協力して、開発途上国へのテニス用品の寄贈をはじめ、テニスボールのリユース活動の一環として中古ボールの回収を行い、教室内の防音対策用に机と椅子に取り付けことを目的に全国の学校機関へボールを提供しています。
JTA環境保全基本方針の策定
中央競技団体の公益法人化、オリンピック・パラリンピックの東京開催等、日本のスポーツ界を取り巻く環境は大きく変化し、中央競技団体にも社会的責任として環境保全への取り組みがこれまで以上に求められるようになっています。JTAもこれまでの教育・啓発活動を中心とした環境保全の取り組みを見直し、具体的な成果に通じる活動のための基本方針を採択することとしました。
JTA環境保全基本方針は、基本理念と行動指針から構成されます。
①基本理念
公益財団法人 日本テニス協会は、環境問題に対する自主的な取組みと、その継続的改善を重要課題の一つとして位置づけ、テニスを通じて環境への影響に配慮し、その保全に努めことにより持続可能な社会を実現するために積極的に行動する。
②行動指針
・日本テニス界は、環境保全に関する法令上の義務を遵守するとともに、環境破壊につながる行為を厳に慎む。
・日本テニス協会は、施策の策定及び決定において、環境的側面に配慮を行うこととする。
・日本テニス協会は、日本テニス界の環境保全に向けた取り組みを主導し、環境保全のために必要な施策に関する情報を提供すると共に、この分野で教育・啓発活動を率先して行う。
・JTA事務局において、電力の削減、紙の有効利用などの省エネ・省資源及び、資源のリサイクルを推進する。
・テニスプレーヤー、指導者、審判員、観客、テニス事業者、テニス競技会関係者は、テニス競技の環境保全面での影響を理解し、用具、施設の使用に際して3R活動 - Reduce(減らす)、Reuse(再利用する)、 Recycle(再資源化する) - を実践する。
・具体的な行動として、テニスプレーヤー、指導者、審判員は再利用・再資源化の推進、そして観客はごみの持ち帰りを率先して行う。