[シングルス第3試合]
○日比野菜緒 6-4、3-6、7-6(7) ●ユリア・プチンツェワ
■最終セットのタイブレークで、日比野は2-6と追い込まれた。4度のマッチポイントを跳ね返し、日本の勝利を決めた時、声を出したり、ポーズをとる力は残っていなかった。しゃがみこんで喜びをかみしめると、自然に涙があふれてきた。「最後は観客の皆さんのエネルギーに力を頂いて、最後までファイトすることができました」。思い入れの強い国別対抗戦で、気力の勝負を制した。
■後ろに元世界1位の大坂、経験豊富な青山、柴原ペアが控えているとは言え、ナンバーワン同士の対決に重圧はあった。プチンツェワには、ことし1月のホバート国際を含め、過去2戦2敗で、「ちょっと苦手意識もある選手」。
■相手もバックハンドが武器で、角度をつけても、さらに厳しいボールが返ってくる。第1セットは3-3から、相手のミスが続いたところをブレークして先取。だが、第2セットはプレーのギアを上げた相手に一気に押されて、0-4となった。プチンツェワは強打で押し込んだ後に、ドロップショットを出すことが多かった。日比野が積極的にネットに出ても、頭上を抜かれた。前後に揺さぶられ、徐々に体力を奪われていく。第2セットの途中から、疲労を隠せなかった。
■杉山監督から「勝つためには、ナオもこのレベルをキープするしかない」と言われ、最終セットは気力を振り絞って、ボールを打ち合った。互いに一歩も譲らず、タイブレークに持ち込んだ。タイブレークで相手にマッチポイントを握られた場面からは1ポイントに集中し、観客のボルテージの高まりを感じて、「自分が勝利を決められたら、どんな気持ちになるんだろうと思って、そのあたりからここで勝ちたいと思った」。その瞬間、湧いてきたのは「夢であるビリー・ジーン・キング・カップ優勝に近づいた。このチームでファイナルにいけるんだ」という喜びと、ツアー優勝でもなかったという感激の涙だった。
■「私勝っちゃって、いいのかなと途中で思いましたね。大坂選手の試合を楽しみに来ている方も少なからずいたと思うので」と観客を気遣うところに人柄が出ていた。そんな控えめな29歳が「この3カ月間取り組んできたことが間違いじゃなかったと思いました。(昨年)11月のBJKと比べてみても、選手として、自分で言うのもおこがましいですけど、成長できたんじゃないかと感じました」と言った。チームの勝利の立役者となり、この2日間で確かな手ごたえをつかんだ。
[ダブルス]
○アンナ・ダニリナ/ジベク・クランバエワ 7-6(7),3-6,[11-9] ●青山修子/柴原瑛菜
■柴原「本当に頑張ったけれど、ちょっと足りない場面があった。最後の10ポイントタイブレークは、どうなるか分からなかった。残念で悲しいが、でも、本当にいっぱい学んだ」
■青山「勝ちたかったが、力が入ってしまって、自然なプレーというよりはポイントを取りたいっていうところに頭がいってしまった。最後に勝ってみんなで盛り上がってもらうことはできなかったが、最後まで二人でしっかりファイトした。大事な場面でどういうプレーをするか、もう一回詰めて、いいプレーにつなげたい」
■大坂なおみ「素晴らしい経験ができた。今日はプレーしなかったが、菜緒の試合やダブルスを見て、楽しむことができた。それと同時にいろいろなことを学んだので、今後実行していきたい。(BJK杯出場はパリオリンピック出場の条件の一つ)許されるのであればパリ五輪に参加したい。子供の頃から夢見ていた大会。小さい頃からテレビで見て、五輪はスポーツを祝う祭典だと思っていた。参加したらベストの結果を残したい」
■本玉真唯「今回、出場はできなかったが、先輩方のかっこいいプレーに、自分のモチベーションも上がった。次のファイナルでは、自分がもっと強くなって、プレーできるように頑張りたいと改めて思った」
■杉山愛監督「選手のみんなに心から感謝したい。それぞれが、やるべきことをプロセスの中でやってるから今のチームがある。BJK杯で悔しい思いをした選手がたくさんいるが、みんな、ただ悔しいで終わらないで、次により強い選手になって帰って来ようと思いながらプロセスを過ごしているから、決勝ラウンドへの道が開けたと思う。(昨年の監督就任から)本当に意味ある1年4カ月を過ごしてこられたと思う。本当に誇りに思うチームです」
(日本テニス協会広報部)
本記事は、日本テニス協会メールマガジン「Tennis Fan」の抜粋です。「Tennis Fan」の購読ご登録はこちらから!
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