【デビスカップ by BNPパリバ 2016 ワールドグループ1回戦 英国-日本】
英国・バーミンガムで4日から始まった対戦は、1日目のシングルス2試合を1勝1敗で終えた。第1試合で英国のエース、アンディ・マリー(世界ランク2位)がダニエル太郎(同87位)に快勝すると、第2試合では日本の大黒柱、錦織圭(同6位)がダニエル・エバンズ(同157位)をストレートで下した。2日目の5日は、ダブルス1試合が行われる。
[シングルス第1試合]
●ダニエル太郎 1-6, 3-6, 1-6 ○アンディ・マリー
■終わってみれば昨年終盤に世界のトップ100に入った23歳のダニエルが、四大大会で2度の優勝を誇るA・マリーに1時間30分で軽く一蹴された格好だが、ラリー戦ではダニエルが持ち味を発揮した。ロングラリーになるほど、よく走って強打を粘り強く切り返すダニエルの良さが垣間見えた。「ジョコビッチ(セルビア)と並ぶベースラインプレーヤーと、サーブを抜いたら、互角にできた。自信になる」とはダニエルの試合後のコメント。ストローク戦では世界のトップと十分渡り合えるところを示したダニエルだが、課題のサーブでは力の違いを見せつけられた。
■第1セット第2ゲームのサービスでは、「緊張からラケットが振り切れていなかったのでロングになった」と2度のダブルフォールトを犯すなど自滅してサーブを落とすと、ずるずる5ゲームを連取された。第2セットは落ち着きを取り戻してサーブをキープし、3-3まで競り合った。しかし、ここでギアを一段上げたA・マリーにリターンから攻められ2連続でサーブを破られた。第3セットも第2ゲームで早々にサーブを破られ、最後まで試合の流れを引き寄せることはできなかった。
■ダニエルにも相手サーブを破るチャンスはあった。第1セット第3ゲームで1度、第3セット第5ゲームで1度。しかし、どちらもA・マリーの強烈なサーブにリターンを返せずに好機を逃した。最速218キロのサーブを打ち込んだA・マリーのサービスエースは15本。さらにダニエルがラケットに当てても返球できなかったサービスウイナーも15本を数えた。ダニエルもサーブで最速197キロをマークした。以前と比べれば力強さを増しているが、世界有数のリターナーには通用しなかった。弱点のセカンドサーブになると、A・マリーはベースラインの中に入ってリターンを打ち込み、ダニエルを最初から守勢に追い込んだ。サーブ力、リターン力の実力差はどうしようもなかった。
■「第2セットは長いラリーが増えて、僕も攻撃でき始めていた。そこでレベルを上げてリズムを切断してきた。やはり彼はトップだと思った」とダニエル。「相手のサーブは返せなかったし、自分のセカンドサーブも悪かった。ちょっともの足りなかった」と悔しさが募ったA・マリーとの初対戦だった。
[シングルス第2試合]
○錦織 圭 6-3, 7-5, 7-6(3) ●ダニエル・エバンズ
■アウエーの怖さを感じさせられた試合だった。エバンズは会場でもあるバーミンガムの出身で、正真正銘の地元でのデ杯。第1試合でエースのアンディ・マリーが勝って迎えた2試合目。当然、会場の熱量も高く、また、彼自身、2013年の全米オープンの1回戦で錦織を破った経験があるため、ある程度以上の自信を持っていたこともあっただろう。ドローミーティングの直前に故障で欠場となったカイル・エドムンドの代役としての出場ながら、キレのあるストロークと積極的に仕掛けるネットプレーで、今季のツアーレベルの試合ではまだ未勝利とは思えない鋭いプレーを見せ、錦織を度々ピンチに陥れた。
■とはいえ、実力の差はやはりはっきりとしており、錦織は手こずりつつも敗戦の予感は一切感じさせず、要所を締めてストレートでの勝利に結びつけた。だが、エバンズが決めれば観客たちが立ち上がって大きな歓声を上げ、逆に錦織が決めても何の反応も起きないという相手にとってホームの状況は、相手の闘志と集中力を最後まで衰えさせず、錦織には非常に厄介なものとなった。試合後のエバンズとレオン・スミス監督は「いいレベルの試合ができた」と口を揃えていたが、これは3日目の5試合目を睨んでのコメントであり、また、錦織としても、マリーとのエース対決での会場の雰囲気はこの試合以上にものになるのは間違いない。1勝1敗とはいえ、やはり不気味だ。
■錦織は第1セットでは3度、第2セットでも1度、第3セットでは3度、エバンズのサービスゲームを破って勝利したが、相手のエバンズも順に1度、なし、3度のブレークを錦織から奪っている。錦織は前回敗れた全米オープンでのエバンズのことは正直よく覚えていないと言いながらも「前はもっと打ち込まれて負けたような気がしていた」と話し、今回のエバンズについては「思ったよりも打ってこなかったし、バックもスライスが多く、じっくりと来る相手だった」と振り返っている。
■序盤の錦織は、スライスを多用していた片手打ちのエバンズのバックを攻めの基点にしていたようだった。バックを突いておいて、浮いたスライスを狙ってのネットプレーや、フォアに回り込んで相手を振り回すラリーでポイントを重ねていた。
■だが、ゲームが進むごとにエバンズも錦織の攻めに対応し、バックでは強打を増やし、リターンで主導権を握らせないようにキック力のあるサービスをしっかりと打ってくるなど、徐々に接戦に持ち込んでいった。
■第3セットで先にブレークして2-0とした直後にブレークバックされたことに関しては「あそこでブレークされて集中力を落としたのは事実」と認め、「ここをキープできていれば、相手のいいところを出させず、もっと簡単なスコアで勝てていたかもしれないと思う。この試合を生かして、サービスの修正をしながら、今後の試合に臨みたい」と錦織は話していた。
■「デ杯にはいい意味で慣れてきた」と錦織は言う。チームのナンバーワンとしての経験を積んできたことで、以前、感じていたような余計な緊張感や重圧はなく、団体戦を戦いながらも個人の試合に集中するというメリハリがつけられるようになったと彼は感じているのだという。チームのエースとして最低2勝、あるいは3勝を期待される立場でもあるはずだが、闘志は持ちつつも、気負いは感じない。この後の試合も期待してよさそうだ。
【試合予定】
◆第2日/3月5日午後2時(日本時間5日午後11時)開始
[ダブルス]西岡良仁/内山靖崇-ジェイミー・マリー/ドミニク・イングロット
◆最終日/3月6日午後1時(日本時間6日午後10時)開始
[シングルス第1試合]錦織圭-アンディ・マリー
[シングルス第2試合]ダニエル太郎-ダニエル・エバンズ
※デビスカップは初日にシングルス2試合、第2日にダブルス、第3日に対戦相手を入れ替えてシングルス2試合を行い、3勝したチームの勝利です。第2日以降の出場選手は変更される場合があります。勝敗決定後の試合は3セットマッチに変更され、デ杯の規則に基づき打ち切りとなる場合もあります。
(広報委員会)