【楽天ジャパンオープン】
(5日~11日、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園・東京)
[シングルス準決勝]
○ブノワ・ペア(フランス) 1-6,6-4,6-2 ●錦織圭
■「バックハンドが強く、フォアハンドでは高いボールを使ったり、スライスも交ぜてくる。普通の選手よりやりにくさはある」と試合後の錦織は話した。準々決勝の後、錦織はペアのバックハンドについて「とてつもない」と表現していたが、それには球威はもちろん、コースや球種の自在性、ミスの少なさなど、あらゆる要素が含まれる。いわゆる両サイドにフォアハンドを持つ選手の一人だが、彼はバックハンドの方がより攻撃的で懐が深い分、厄介さも増す。
■錦織は様々な攻撃パターンを持つ選手だが、相手のバックサイドに深く入れて崩し、それをフォアで仕留める形はその一つ。しかし、ペアにはこれがうまく機能しないため、攻め手が一つ失われることになる。嫌な相手と見ていたのは、そうした相性の悪さも理由だったのだろう。
■第1セットの錦織は第2ゲームと第6ゲームでブレークに成功。わずか20分でセットを奪って先行した。第2セットに入っても錦織が押し気味に進んでいたのは確かで、ペアは第6ゲームでメディカル・タイムアウトを取って持病を抱える左足首を治療した。3-3からの第7ゲームでは錦織が5度のブレークチャンスを得た。精度の高かったペアのバックハンドにミスが出始めており、あと一押しという状態だった。錦織も「あそこが一番悔やまれるポイント。リターンのミスがブレークポイントで続いた。あそこで取れていれば、第2セットも簡単に取れていた」と振り返っている。
■ペアはこの場面について「ラッキーだった」と笑みを見せながら、「とにかく何とか耐えようと思っていた。3本はいいサーブが入り、2本は相手のイージーミス。ケイにはファンの応援や、前年覇者のプレッシャーもあったと思う」と冷静に振り返った。イライラにまかせてラケットを叩き付けたりする選手だが、だからといって、にわかに崩れていくわけではないのが彼のユニークさだ。
■ピンチを乗り越えた後のペアは、フォアハンドの精度も戻りサーブも切れを増して第2セットを奪った。第3セットに入ると明らかにペアの流れになった。「第1セットは相手が良すぎてお手上げだったが、第3セットは自分のプレーが勝っていたと思う」。ペアがそう話した通りの展開だった。第2ゲームのブレークで勢いに乗ったペアがそのままリードを広げ、最後もブレークで決勝進出を決めた。
■敗れた錦織も「(この大会は)かなりいいテニスができていた」と話している。確かにボルナ・チョリッチ(クロアチア)、サム・クエリー(米国)、マリン・チリッチ(クロアチア)と難敵ぞろいのドローを勝ち抜いた今大会の彼の強さは本物だった。今季の成績上位8人で戦われるATPワールドツアー最終戦の出場権争いでは現在6位。錦織のラストスパートに期待したい。
(広報委員会)