[車いすテニス男子シングルス決勝]
○小田凱人 6-1,6-4 ●アルフィー・ヒューエット(英国)
■四大大会初優勝を誓って臨んだ大会だった。優勝すれば世界ランク1位の栄誉も手にすることができる。大会序盤に小田が優勝と1位への思いを明かしていた。「(ランキング)世界一がかかっているので、取れるなら、何がなんでも取りたい。そこは(初出場だった)去年とは全く違う心境で、1位がかかっていることはめちゃめちゃ意識している」。目の前の1ポイントに集中しながら同時に「初優勝」「1位」の二つの夢は常に頭の片隅にあった。
■現在1位のヒューエットに挑んだ決勝では、小田の気迫、勢いが素晴らしかった。もともと速攻が武器だが、「リターンでエースを取るとか、3球目でコースを突くことを徹底してできた」と、常にラリーの序盤で主導権を握った。ショットで光ったのがバックハンドのクロス。サービスラインとサイドラインの交点付近に、面白いように決まった。小田は「バックハンドは苦手だったが、フォアとイーブンくらいのショットが打てるようになった。相手のフォアと打ち合っても怖さを感じない」と胸を張った。
■今大会では、第1セットで圧倒しても第2セットで巻き返される場面が目立った。同じことをやっていては厳しい戦いになると、悪癖の修正を決勝でのキーポイントに上げ、「相手も(ギアを)上げてくるので、そこを追い越すようなイメージでやりたい」と気持ちを引き締めて臨んだ。その第2セット、ブレークバックを許して4-4に追いつかれた。だが小田は「ミスも増えたが、感情は揺らぐことなく、絶対できると言い聞かせながらやっていた」と強い精神力を見せ、2ゲーム連取で試合を締めた。
■ラケットを落とし、天を仰ぐ。人差し指を立てたのは、世界一を示すハンドシグナルか。涙がこぼれ、両手で顔を覆ったが、このときだけは17歳の少年の素顔に戻った。「いろんな思いがこみ上げてきた」と小田。この1月に国枝慎吾が引退、「(次は)俺の出番だという気持ちは多分、僕が一番強い」と男子の車いすテニスを支える気概を見せた。しかし、全豪では決勝でヒューエットに敗れ、準優勝だった。今大会では、センターコートでそのヒューエットに勝ち、世界一になる姿を常にイメージしてきたという。
■四大大会では日本男子として国枝に次いで二人目の優勝だ。後継者として「彼が引退した今、僕が別の歴史を作りたい。少し重圧を感じるが、それを楽しみたい」と小田。若き王者の物語が今、このローランギャロスから始まる。
(日本テニス協会広報部)
本記事は、日本テニス協会メールマガジン「Tennis Fan」の抜粋です。「Tennis Fan」の購読ご登録はこちらから!
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