■女子シングルス準決勝で第23シードの大坂なおみは第8シードのアマンダ・アニシモバ(米国)に3セットで敗れ、優勝した20年以来の決勝進出を逃した。四大大会の準決勝では4戦4勝だったが、初めて黒星を喫した。
[女子シングルス準決勝]
○アマンダ・アニシモバ(米国) 6-7(4),7-6(3),6-3 ●大坂なおみ
■どちらに転ぶか分からない競り合いが2セット続いた。1セットオールの途中経過は、両者の力量と勝利へのハングリーさが等しかった証しだろう。しかし、より多くの距離を走ってコートをカバーした大坂には、最終セットを戦う十分な体力が残っていなかった。大坂がコートを走った総距離は約1.9キロメートルに達した。相手の強打を拾うため、また、自分のショットの精度を上げるために走った。ダッシュとストップ、切り返しの連続で、この距離はさすがに体力を削る。最終セットは3-5からのゲームで相手のマッチポイントを2度しのいだが、それが精一杯の抵抗だった。
■「正直、悲しいとは感じていない。自分のベストを出せたから」。大坂の試合後の第一声だ。「私にはこれが励みになる。もっと上を目指そうという気持ちにさせてくれる」と敗戦をプラスに捉えた。ウィンブルドンの3回戦で逆転負けを喫したときは、会見で「ポジティブなことは何も言えません」と目を伏せたが、そのときとは別人のようだった。
■大坂は「全てはプロセスだと思う。トマシュとの2つ目の大会であったことを考えれば、今回は本当によかった」と新コーチに言及した。前哨戦のモントリオールで陣営に招いたのがトマシュ・ビクロフスキコーチだ。開幕前には「本当に頼りになる。核心を突いてくれるし、まるでテニスの百科事典みたい。そんな人が陣営にいるのは心強い」と話した。
■コーチは意識改革をもたらした。「完璧なチャンスが来るまでは無理に攻めない。返球されても、あわてず、組み立てる」。これを忠実に実践し、アニシモバに敗れた試合でもアンフォーストエラーをわずか27本にとどめた。「怖い人だと思っていたけれど、一緒に仕事をするようになって、よく笑う人だと分かった。親しみやすい笑顔で、素敵」と、その人柄にも好感を持った。準決勝までの6試合で信頼感はさらに深まっただろう。
■信頼できる伴走者にめぐり会えた、新境地を開くことができた、このまま続けていけばいつか必ず四大大会のタイトルを手にできる--大坂が敗れても前を向くのは、そうした確信があるからだろう。
(日本テニス協会)
本記事は、日本テニス協会メールマガジン「Tennis Fan」の抜粋です。「Tennis Fan」の購読ご登録はこちらから!
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