[シングルス決勝]
○坂本怜(IMG) 1-6,6-3,6-4 ●Christoph Negritu(ドイツ)
■第1セットは調子が上がらなかった。アンフォーストエラーが目立ち、ファーストサーブ時のポイント獲得率は46%の低さだった。前日の準決勝に勝ってから、優勝の二文字が「ずっと頭にこびりついていた」という。今年の全豪オープンジュニアを制したが、一般の大会では、下部に位置するITFワールドツアーでもまだ優勝がない。決勝に進んだ時点で「自分でも、ええ? っていう感じだった」と明かす。プロでの初タイトルが見えてきて、「勝ちたい」という欲が一気に噴き出し、動きが硬くなった。
■第1セットを簡単に失ったが、セット間のトイレットブレークで集中し直した。第2セット冒頭のサービスゲームが一つの鍵になった。サーブからの最初のストローク、すなわち、昨年からの急成長を支えた3本目攻撃を成功させると、この試合で初めて「カモン!」の大声が出た。このゲームではエースも2本。坂本は「そこで切り替わった」と振り返る。
■ただ、相手も粘り強かった。爆発的なストロークの持ち主ではないが、よく走って坂本の強打を拾い、簡単にはあきらめない。今秋のプロ転向にあたり、坂本はプロとジュニアの違いについて「(プロは)しつこい、いやらしい、同じことをやり続けてくる」と話していた。このNegrituがまさにそういう選手だった。以前の坂本なら、しつこさに音を上げ、自滅していたかもしれない。だが、ここでは球速を抑え、丁寧にラリーした。「ゆっくり組み立てるところは組み立て、スッと前に入っていくっていうのが、アジャストしてできていった」。追い込んで最後はネットで仕留める形も増え、主導権が坂本に移っていった。
■「全然思い描いていなかった」優勝だという。プロ転向から約2か月で手にした初タイトルに「早すぎます」と坂本。全豪ジュニアに続く大きなタイトルを喜ぶ一方で、「謙虚でいなきゃなと思います」と自分を戒める。調子に乗りやすいタイプと自覚しているからだ。ただ、18歳にとって、こういう相手に、こういう勝ち方でつかんだタイトルの意味は大きい。昨秋、国内で開催されたチャレンジャーシリーズの経験が、今年の全豪ジュニアのタイトルにつながった。1年後、坂本は同じシリーズで、また大きな一歩を刻んだ。
(日本テニス協会広報部)
本記事は、日本テニス協会メールマガジン「Tennis Fan」の抜粋です。「Tennis Fan」の購読ご登録はこちらから!
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