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いま甦るニューヨークカップの記憶2

4 日本倶楽部から贈られた
「The NEW YORK CUP」
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しかし、日本国内でのテニス環境はまだ一歩を踏み出したばかりでした。チャレンジラウンドの興奮さめやらぬ10月、ニューヨークの日本倶楽部(現、日本クラブ)有志は日本のチャレンジラウンド進出を記念したカップを製造し、翌年に正式発足する日本庭球協会に贈ることとします。日本テニスの国際的活躍を応援するためでした。

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1922年から1942年までの全日本庭球選手権大会男子シングルス優勝杯。ニューヨークカップと呼ばれていた


デビスカップの受け皿と同じ「Black, Starr & Frost」社が製造した銀杯は約1,000ドル(単純計算で現在の約340万円)で、高さ16インチ(約40㎝)、口径8インチ(約20㎝)、重さ165オンス(約4.6㎏)です。「The NEW YORK CUP」と名付けられ、「日本のデ杯参加とチャレンジラウンドでの栄えある健闘を記念して、日本倶楽部から日本庭球協会へ贈る」という意味の英文が刻まれていました。


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1922年4月、ニューヨークカップ到着を記念して。左から、熊谷一彌、渡辺恒次郎(三井物産、台覧試合で審判)、山崎健之亟(東京ローンテニス倶楽部会員)、鎌田芳雄(三井物産、協会理事)、朝吹常吉
翌年4月、三井物産の三保幹太郎が持ち帰ったカップは、9月に開催されることとなった全日本庭球選手権男子シングルス優勝杯として使われることになりました。
5 台覧試合と攝政宮記念カップ
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1921年デ杯初参加の活躍で一躍有名人となった清水善造が一時帰国したのは、11月3日のことでした。東京、大阪で「凱旋」報告した清水は12月17日、宮内省千代田倶楽部のコートで行われる台覧試合に招かれます。前年3月から約6ヵ月間の欧州旅行から帰国後の11月、攝政に就任された東宮(皇太子)はゴルフ、テニス、乗馬などを嗜まれるスポーツマンでした。

翌年4月に帰国した熊谷一彌も5月6日、新宿御苑のコート開きとなる台覧試合に招かれています。

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1922年から1942年までの全日本庭球選手権大会男子ダブルス優勝杯。攝政宮杯と呼ばれていた
台覧試合は、テニス界全体にとっても名誉なことでした。日本庭球協会は、台覧試合を行った際に清水と熊谷に与えられた御下賜金をもってカップを製造します。「攝政宮殿下台覧庭球…」など記念の文字が刻まれた一対の攝政宮記念カップ(攝政宮杯)は、全日本庭球選手権男子ダブルス優勝杯となりました。
6 カップを手にした歴代優勝者たち
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1922年9月、第1回全日本庭球選手権シングルスで優勝した福田雅之助は、朝香宮から拝受したニューヨークカップを所属するポプラ倶楽部で披露したあと、美しい大カップを自宅に持ち帰って母親を驚かせました。

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ニューヨークカップを手にする歴代優勝者【1922年 福田雅之助】


つづく第2回以降は、1923年原田武一、1924-25年俵積雄、1926年太田芳郎、1927年安部民雄、1928年牧野元、1929年原田武一、1930年佐藤次郎、1931年桑原孝夫、1932年布井良助、1933年西村秀雄、1934-36年山岸二郎、1937年Gottfried von Cramm、1938年山岸二郎、1939年Franjo Puncec、1940年小寺治雄と続きます。それぞれの時代に、それぞれの物語がありました。

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ニューヨークカップを手にする歴代優勝者【1923年 原田武一】


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ニューヨークカップを手にする歴代優勝者【1930年 佐藤次郎】


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ニューヨークカップを手にする歴代優勝者【1932年 布井良助】


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ニューヨークカップを手にする歴代優勝者【1935年か36年 山岸二郎(複でも優勝し、パートナーの村上麗蔵が攝政宮杯を手にしている)】


その間、1934(昭和9)年10月には、ローンテニス社主催による「テニス展覧会」が東京と大阪で開かれています。ローンテニス誌に掲載された記事によれば、会場にはニューヨークカップ、攝政宮杯など数々のカップ類、ラケット、写真、テニス書などが展示され、テニス医学の図解、用品用具・コートに関する研究などの発表、テニス映画の映写もあって、大好評だったとのことです。

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1934(昭和9)年10月、ローンテニス社主催「テニス展覧会」で飾られたニューヨークカップと攝政宮杯など。会場は、東京神田と大阪淀屋橋の美津濃運動具店(現、ミズノ株式会社)

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