戦災での焼失ばかりでなく、戦時中には金属供出や銀回収運動のため多くの賞杯が失われました。終戦後の1945(昭和20)年11月に日本庭球協会が復興し、翌年10月、田園倶楽部コートで第21回全日本選手権大会が開催されましたが、カップが授与された記録は見当たりません。
日本水泳連盟と日本庭球協会に「天皇杯」が下賜されたのは、1947(昭和22)年8月のことでした。10月、甲子園テニス倶楽部コートで行われた第22回全日本大会からは、男子シングルスに「天皇杯」、男子ダブルスに新しく製造された「摂政宮杯」が授与されています。
一方、失われたニューヨークカップの全貌も甦ります。2014年9月には、ニューヨーク日本クラブ有志の協力により、当時の米国テニス専門誌、American Lawn Tennis誌1922年4月15日号に掲載されていたカップ寄贈の経緯を伝える記事を見つけ出すことができました。記事と写真によって、カップに刻まれた文字や書体を確認することもできます。
カップ寄贈の経緯を伝えるAmerican Lawn Tennis誌(1922年4月15日号)の表紙と記事・写真
現在、日本テニス協会では、ニューヨークカップの記憶を甦らせ、その意味を後世に伝えるため、ニューヨークカップを再現(レプリカ)する計画を進めています。2015年に第90回を迎える全日本選手権大会では、ほぼ70年ぶりに、ニューヨークカップの輝く姿を見ることができるでしょう。